にぎっ、にぎっ
赤子の剥き出しの足を
後ろ手に握る
肌寒い朝、女は我が子の足を愛おしそうに
握りしめたまま消毒コーナーを素通りして
入店していく
スーパーは開店したばかり
客は筆者を含めまだ数人といったところ
にぎっ、にぎっ
赤子の剥き出しの足を
後ろ手に握る
リズミカルに何度も繰り返しながら
パン売り場
惣菜売り場
精肉売り場に鮮魚売り場
野菜売り場
ぐるりぐるりと店内を歩き回ると
レジ近くのカゴを手に
空いたほうの手で愛おしそうに我が子の足を
にぎっ、にぎっ
愛と幸せは確かにそこにあり
なんということのないありふれた美しい光景
ではあるが
時節柄
なかなかに考えさせられる光景である