猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

にぎっ、にぎっ

にぎっ、にぎっ

赤子の剥き出しの足を

後ろ手に握る

肌寒い朝、女は我が子の足を愛おしそうに

握りしめたまま消毒コーナーを素通りして

入店していく

スーパーは開店したばかり

客は筆者を含めまだ数人といったところ

 

にぎっ、にぎっ

赤子の剥き出しの足を

後ろ手に握る

リズミカルに何度も繰り返しながら

パン売り場

惣菜売り場

精肉売り場に鮮魚売り場

野菜売り場

 

ぐるりぐるりと店内を歩き回ると

レジ近くのカゴを手に

空いたほうの手で愛おしそうに我が子の足を

にぎっ、にぎっ

 

愛と幸せは確かにそこにあり

なんということのないありふれた美しい光景

ではあるが

時節柄

なかなかに考えさせられる光景である

 

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