猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロットの岬の夏-1

トーザ・カロットの岬に

今年も短い夏がやってきました

 

猫そっくりの毛糸屋さんの店主は

棚や床をいつものように丁寧に

拭きあげながら

雲を読むひとらとの会話を思い返していました

 

小さな青い星が本当はどこにあって

どんな物語に彩られているのか

猫だけしかいなくなったという噂は

事実なのか

 

すっくと立つことを選んだ

自分らのような

猫そっくりの生き物はいるのだろうか

 

訪ねるにも

確かめるにも

遠すぎることだけは確かだったので

毛糸屋さんの店主は

ふくらませたしっぽを軽く振りました

 

そうして

本当の猫のような格好で

うううう〜ん

やわらかく伸びをすると

すっくと立ち上がり

 

「今日はレース糸の紫のを多めに並べましょう」

 

そう呟くと

店の奥へと消えていきました

 

トーザ・カロットの岬には

今日も命を包み込むような

風が吹いています

 

 

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