トーザ・カロットの岬に
今年も短い夏がやってきました
猫そっくりの毛糸屋さんの店主は
棚や床をいつものように丁寧に
拭きあげながら
雲を読むひとらとの会話を思い返していました
小さな青い星が本当はどこにあって
どんな物語に彩られているのか
猫だけしかいなくなったという噂は
事実なのか
すっくと立つことを選んだ
自分らのような
猫そっくりの生き物はいるのだろうか
訪ねるにも
確かめるにも
遠すぎることだけは確かだったので
毛糸屋さんの店主は
ふくらませたしっぽを軽く振りました
そうして
本当の猫のような格好で
うううう〜ん
やわらかく伸びをすると
すっくと立ち上がり
「今日はレース糸の紫のを多めに並べましょう」
そう呟くと
店の奥へと消えていきました
トーザ・カロットの岬には
今日も命を包み込むような
風が吹いています