猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

記憶と洗濯物

水に濡れ、色濃くなる。

じっとり重たくなる。

ぴっとり貼りついて、離れやしない。

 

あなたの苗字を手放した部屋に、あなた宛ての郵便物が届く。

受けとるべき人は虹の向こう、空の彼方。

開封せずに送り主にお返しするのが日常のひとこまとなって、久しい。

 

水に濡れ、色濃くなる。

じっとり重たくなる。

ぴっとり貼りついて、離れやしない。

 

記憶と洗濯物は、似ている。

乾いていれば軽やかで、まとわりつくこともない。

小さな歪みができたところで、修正が効くことがほとんど。

気持ちが沈むこともない。

 

水に濡れ、色濃くなる。

じっとり重たくなる。

ぴっとり貼りついて、離れやしない。

 

雨、涙。

あしたはそんな気分になりそうだ。

 

手紙をよこした誰かを思って。

 

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