水に濡れ、色濃くなる。
じっとり重たくなる。
ぴっとり貼りついて、離れやしない。
あなたの苗字を手放した部屋に、あなた宛ての郵便物が届く。
受けとるべき人は虹の向こう、空の彼方。
開封せずに送り主にお返しするのが日常のひとこまとなって、久しい。
水に濡れ、色濃くなる。
じっとり重たくなる。
ぴっとり貼りついて、離れやしない。
記憶と洗濯物は、似ている。
乾いていれば軽やかで、まとわりつくこともない。
小さな歪みができたところで、修正が効くことがほとんど。
気持ちが沈むこともない。
水に濡れ、色濃くなる。
じっとり重たくなる。
ぴっとり貼りついて、離れやしない。
雨、涙。
あしたはそんな気分になりそうだ。
手紙をよこした誰かを思って。