もはや懐かしさすら感じない
わたしにとって
そんな夢の話をしよう
遠い街で約束があってね
大勢の人らが待っている
わたしは彼らに話をすることになっているんだよ
それで
バスに乗ったというわけだ
それがどうだろう
観光バスのような様子で
皆が目的地があるようで
行き着く先を知っている
わたしだけがそれを知らないときたもんだ
スマホはこの世界には存在しない
あるいは時間軸がずれているせいか
言葉も通じないときたもんだ
行き先の街の名が
どんどん記憶から抜け落ちて
話そうとした物語もすっかり忘れ
自分が男か女かもわからない
雨の中
結局途中でバスを降り
妙にぬかるむ急勾配
これを越えれば街に着く
しかし足が重すぎて少しも少しも進みやしない
わたしは約束を守れない
じたらばたら不恰好に汗をかいて
ようやっと夢から押し出されたときたもんだ
今朝はそんなふうに
始まったのだよ