骨折に見舞われたのは、コロナ禍という言葉がささやかれ始めた頃のこと。
未知の病原体に対抗するワクチンや治療法は、確立されていなかった。
街からは人が消え、トイレットペーパーをはじめとした日用品も消え、誰かに会うことも触れることも、著しく制限された。
怪我は完治したが、以前のように「スーパーに行ったついでに米袋🍚」「ドラッグストアに寄るからトイレットペーパーも買っとかなくちゃ🧻」という、なんということのない“少し嵩張るものをついで買い”が難しくなった。それで、どちらも通販に頼っているのは以前にも買いた通りである。 車も自転車もないので仕方ない
トイレットペーパーは、扉のついた棚に収納している。
適当なロール数をトイレに移動させ、少なくなったら棚から補充する。その繰り返しだ。
米は、袋のまま冷蔵庫に入れている。
以前は米櫃とでもいうのか、システムキッチンにくっついていたものを使っていた。
だが、なんとなく衛生面が心配になり、ある時から全く使わなくなってしまった。
最近になって、米櫃をどうしようかという話になり、冷蔵庫に収納できるものを探した。今は、米袋をそのまま冷蔵庫に入れている状況なのだ。
縦置き・横置き、扉ポケットに収納できるもの、野菜室に入れられるもの、袋ごと入れておけるもの…
だが、我が家の冷蔵庫にはなかなか合うサイズが見つからない。
「あれ、数ミリ足りないね」
「野菜室小さいもんね」
「庫内の高さがあと5センチあればよかったねえ」
いずれ米櫃も処分する日がくるのだから、このまま買わないままでいいんじゃない?
いつしかそんな流れになった。
米袋をしっかり密封して、こぼれないように安定させて冷蔵庫へ。
米がなくなれば、米袋をその都度処分するだけで済む。単純な話だ。
かくして、我が家では米櫃がない生活を選んだのだった。