猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

珈琲豆の知らせ-1

「髪、切りました?」

 

挨拶もそこそこに、店主が問う。

久しぶりに自分でやってみたんだ、と答える。

珈琲豆を詰めながら

 

「詩人さん、器用でいらっしゃる」

 

ふふ、と微笑む。

猫街の隅の隅のほう、香り立つとびきりの珈琲豆。宇宙猫とも放浪猫とも噂されている、猫そっくりの姿。

人らのようにすっくと立つことを選んだ生き物である店主は、いつもやさしい。

 

旅にはいつ?

 

「珈琲豆の知らせが届く頃に。はい、落とさないように気をつけて」

 

ありがとう、とずっしり重い豆袋を抱き抱える。

雪の前にまた会えるかな?

 

「雪が深くなければお店は開けます」

 

珈琲豆の知らせが届いたら?

 

「よくよく晴れた日にお店が閉まっていたら、そうなのかもしれませんねえ」

 

一年は早いな。

店主さん、またね。

 

「毎度ありがとうございます。いい冬を、詩人さん」