「髪、切りました?」
挨拶もそこそこに、店主が問う。
久しぶりに自分でやってみたんだ、と答える。
珈琲豆を詰めながら
「詩人さん、器用でいらっしゃる」
ふふ、と微笑む。
猫街の隅の隅のほう、香り立つとびきりの珈琲豆。宇宙猫とも放浪猫とも噂されている、猫そっくりの姿。
人らのようにすっくと立つことを選んだ生き物である店主は、いつもやさしい。
旅にはいつ?
「珈琲豆の知らせが届く頃に。はい、落とさないように気をつけて」
ありがとう、とずっしり重い豆袋を抱き抱える。
雪の前にまた会えるかな?
「雪が深くなければお店は開けます」
珈琲豆の知らせが届いたら?
「よくよく晴れた日にお店が閉まっていたら、そうなのかもしれませんねえ」
一年は早いな。
店主さん、またね。
「毎度ありがとうございます。いい冬を、詩人さん」