2020-11-25 cinéma 詩人は嘘をつく かすめるように冬が香って くぐもるように映像が流れる 肩先が時折冷たいのは 換気のせいだろうか その日は 自分の生まれた頃のシネマがかかっていて ほお、と唸った 誰ひとりいない そう思っていたが 明るくなった場内を なんとはなしに見回せば 館主がニコニコと見守ってくれている 「また…」 そう言いかけて 「ありがとう」と 言い直した かすめるように冬が香って くぐもるように映像が流れる 心のスクリーンにも cinémaが繰り返される