猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

cinéma

かすめるように冬が香って

くぐもるように映像が流れる

肩先が時折冷たいのは

換気のせいだろうか

 

その日は

自分の生まれた頃のシネマがかかっていて

ほお、と唸った

 

誰ひとりいない

そう思っていたが

明るくなった場内を

なんとはなしに見回せば

館主がニコニコと見守ってくれている

 

「また…」

 

そう言いかけて

 

「ありがとう」と

言い直した

 

かすめるように冬が香って

くぐもるように映像が流れる

心のスクリーンにも

cinémaが繰り返される