2020-07-13 夏の香 詩人は嘘をつく 雨と競争しながら たどる思い出は 決して平坦なものばかりでなく あなたの背中で 本当は何を思っていたかなど 責めたてられることが大半である 雨と競争しなくても よくなってからは フロントガラスをすべりおちる粒に ふと 思い出なんかに負けないぞ なんて小さく誓ったりもする 雨と競争するのを諦めて 夢からも覚めて マスク越しの夏の香に あと半分 そう呟いてみたりする