遠くの街に暮らす
(風の噂によれば)療養中の知り合いがいる
とっくの昔に全快と聞いていたが
ふだんの交流がまるでないので
様子がさっぱりわからない
重くて(重量ではない)開封を躊躇うのは
いつものこと
他の荷物と同じく
念入りに消毒し
浄化のスプレーをそっとふりかけた
意を決して文字に目を走らせる
ご丁寧な近況報告と
執拗にこちらの様子を知りたがる
興味本位の言霊に辟易する
これもいつものこと
すぐには見えないところに
片づけて
返事は書かないでおこうと
そっと誓った
知り合いは
とてもとても昔
誰かの
友人だったのだろうか
いまはもう
思い出すこともできないでいる