あれほどまでに遠かった
親の背中や肩先に
たやすく指先が届くのは
喜びもさびしさもひとしおだがね
あんたにも覚えがあるんじゃないのかい
あたしらの中身は
いつの時だって分裂し続けてるのさ
なに
人らだってそうさね
おチビがだんだん大人に近づいていくだろう?
芽吹く時の痛みや動悸は
命にはつきものだからねえ
まあ
旅をしすぎて歳のとりかたを忘れてしまった
岬あたりの猫たちはどうだかわからないが
その猫が久方ぶりに訪ねてきて
“落ち空”のカケラを置いてった
あたしらにはどうということもないが
人らの心には光と陰を映すだろう
だが
今宵は雪だるまの満月
人らには必要だからと分けてくれたのさ
さあ
もうすぐ月の出
“落ち空”を削ってポケットに入れて行くといい
幸せな夜を過ごしなされよ