猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

僕は森はずれに住む三つ目を訪ねた

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あれほどまでに遠かった

親の背中や肩先に

たやすく指先が届くのは

喜びもさびしさもひとしおだがね

あんたにも覚えがあるんじゃないのかい

 

あたしらの中身は

いつの時だって分裂し続けてるのさ

なに

人らだってそうさね

おチビがだんだん大人に近づいていくだろう?

芽吹く時の痛みや動悸は

命にはつきものだからねえ

 

まあ

旅をしすぎて歳のとりかたを忘れてしまった

岬あたりの猫たちはどうだかわからないが

 

その猫が久方ぶりに訪ねてきて

“落ち空”のカケラを置いてった

あたしらにはどうということもないが

人らの心には光と陰を映すだろう

 

だが

今宵は雪だるまの満月

人らには必要だからと分けてくれたのさ

 

さあ

もうすぐ月の出

“落ち空”を削ってポケットに入れて行くといい

 

幸せな夜を過ごしなされよ