おうちの中が
すっからかんにかたづきました
命に必要なものは結局
そんなに多くはないのだと
女は満足げに部屋を見渡すのでした
悩みの種もかたづけて
嘘をつくのも
正直すぎるのも
好きになるのも
嫌いになるのも
やめました
何か忘れているようで
何か落ち着かないようで
ほんのいっとき
心がざわわと騒ぎます
自分自身をまるごとかたづけてしまうまで
「ああスッキリかたづいた」
などと宣言できないことを
本能的に知っているものだから
女はまだまだ何かを手放したくて
しかたないのでした
おうちの中が
すっからかんにかたづきました
命に必要なものは結局
ほんの少しでよかったのだと
女は部屋を見渡すのでした