猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

点滅信号#2〜トーザ・カロットの人々

空を回収したあとは

三つ目たちと分けることも多いが

毛糸に混ぜ込んだり

ペンダントか何かにすれば

人が楽しむこともできるのですよ


と言っても人たちは

まだまだ

“落ち空”の扱いには慣れてないから

よほどの思いきりがないと

近づけないようですね


雲を数えられる資質を持ち合わせていれば

落ち空の青にも

必要以上に心奪われることはないのに


ところで

あの点滅信号を設置したのが

わたしたち旅猫の仕業だということは

きみの大切な孫には

あまり知られたくないのだが


この前

しつこく訊かれてしまったのですよ

どうしたものでしょう


点滅信号をくぐって落ち空に触れるたびに

誰かにひどく

責められている気がするのです


空を降らせることなど

わたしたちはとうの昔にやめてしまったのに

困ったものです


ああ

やはりいけない

もう少しだけ黙っておくことにしましょう


猫そっくりの店主は

本物の猫みたいに落ち着かなく

耳をパタパタさせるのでした