猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

前兆

ざわざわと駆け抜けたのは

どこか遠くの街の

そのまた奥の片隅の

いわゆる“ありふれた”

または“とるにたらない”

 

普段なら誰も何とも思わないような

ささやかな出来事でした

 

空がほんの一瞬だけ

「ぴかぴか」

ことのほか青く光りました

 

あまりにもささやかすぎて

気がついても気のせいにしてしまえるレベルで

友だちに話しても笑い飛ばされる程度の

そんな光景です

 

猫じゃあるまいし

空なんて誰にも落とせないでしょ

 

人々はそう笑いあったのでした

 

牛がいなくなり

犬がいなくなり

鳥がいなくなり

人がいなくなり

猫だけになる

 

不吉な歌だと顔をしかめるものはいても

当の猫たちですら

その日はずいぶんと先のことだろう

そう考えていました

 

それで

いつのまにか

鳥がいなくなって

魚がいなくなって

牛がいなくなって

何だか人まで減ってきて

空の落ち始めを知らせる

雲予報がラジオから流れるようになっても

誰も本気にしなかったのです