猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

椅子

何気ない会話だったのに

妙にはっきりよみがえる


“置いていくんだ”

“ないと困るでしょ”


たった一脚の椅子で

押し問答になる僕たち

捨ててしまえばすむことなのに


“持っていかないの”

“買うからいらない”


たった一脚の椅子を挟んで

かろうじて会話する僕たち

これ以上

傷を広げないように

用心深く


何気ない会話だったのに

妙にはっきりよみがえる

僕たちの静かすぎる声