猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

そんなことがふつうのふつうだ

鼻のあたまに

ぷつぷつと汗がのっかりました


あたしが大好きなお話の本を

おとうさんも

おかあさんも


つまんない大人になるから


そう言って

あたしからとりあげようとしたのです


自分たちこそが

つまんない大人でしょ


そう言えば

酷く汚れた言霊が飛んでくると知っていたから

あたしは汗をいっぱい鼻のあたまにのっけて

黙りこくっていたのです


大好きなお話の本には

正直な若者が親切そうな老人に騙されたり

美しいお姫様の結婚相手にツノが生えていたり

猫が毛糸屋さんで働いていたり

そんなことがふつうのふつうだ

という日常が描かれていたのです


図書館で見つけて

家でも読みたくなって

借りて帰ってカバンに隠しておいたのに


ごめんなさい

すぐに学校に返すね

あたしの本じゃないから

返すまで大事にしないと

つまんない大人にならないように

気をつけないとだね


すると

おとうさんも

おかあさんも

じゃあ明日忘れないように

しなさいね


にっこりして

頭をなでてくれました