トーザ・カロット岬の毛糸屋さんに
“手紙をあのひとに”
“今日なら伝えられる”
“花束よりも鮮やかな夕焼け”
そんな名前の毛糸玉たちが
並ぶようになりました
どこかにあるという小さな青い星
噂ではチョコレートや花束を
恋人に渡したり
友達同士で分け合うとか
猫そっくりの店主も幼馴染からそんな話を聞かされ
二番目の月が訪れる頃には
バレンタイン・コーナーを
店の一角に作るようになったのです
飛ぶように売れる
というほどではないけれど
案外と楽しみにしている常連さんも
そして
この時季だけは店の奥からコーヒーではなく
ホットココアの甘い香りがしています
トーザ・カロットの岬には
いくつもの恋を運んでくれそうな風が
今日もびゅうびゅうと吹いているのです