猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-18

トーザ・カロット岬の毛糸屋さんに


“手紙をあのひとに”

“今日なら伝えられる”

“花束よりも鮮やかな夕焼け”


そんな名前の毛糸玉たちが

並ぶようになりました


どこかにあるという小さな青い星

噂ではチョコレートや花束を

恋人に渡したり

友達同士で分け合うとか


猫そっくりの店主も幼馴染からそんな話を聞かされ

二番目の月が訪れる頃には

バレンタイン・コーナーを

店の一角に作るようになったのです


飛ぶように売れる

というほどではないけれど

案外と楽しみにしている常連さんも

そして

この時季だけは店の奥からコーヒーではなく

ホットココアの甘い香りがしています


トーザ・カロットの岬には

いくつもの恋を運んでくれそうな風が

今日もびゅうびゅうと吹いているのです