トーザ・カロット岬の突端に
背の低い花が揺れています
リサラヌアの花です
ひときわつめたい風が岬に吹く頃になると
まるで絵筆に染められているように
それまで透明だった花弁は
ゆっくりゆっくり雪の色をまといはじめるのです
猫そっくりの店主は
誰よりもそれを楽しみにしていて
お店の周りを朝早くから散歩しているそうです
星の流れる音が聞こえた翌朝
運がよければ
目を細めて花を眺めている店主に
会えますよ
今日もトーザ・カロットの岬には
嫉妬すら飛んでいきそうな強い風が
びゅうびゅうと吹いているのです