猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-15

さっくりさっくりと雪を踏みしめ

猫そっくりの店主は

いつものくぼみまでやってきました

小脇にとっておきのお土産を携え

幼馴染に会いにきたのです


お互いがお互いを風変わりだと思っていた頃

言葉はあまり意味を持たず

ただ

見上げた空に揺れる雪だるまの満月に

ふたりして


“ハァァ”


それは大きなため息をついてからというもの

急速に仲良くなったということです


今日は店番を頼んで大急ぎでくぼみにやってきました

くぼみは暖かくほんの少し夏の匂いがして

毛糸屋の店主は本物の猫みたいに目を細め

喉をゴロゴロ鳴らしました


“お年賀”

という宇宙語を覚えたばかりでした