猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-10

もくもくと立ち上がっては

雨を運んできた雲たちが

ようやく薄くなって

日差しのやわらかな季節の到来です


このところ


「もみじになりきれなかった夕日色」

「次の季節を待つまでの穏やかな時間」

「猫たちのひそひそ話」


どこか秘密が匂いたつ

そんな毛糸たちが人気です


そう言えば先日の商談のとき

宇宙語を話す猫が

別れ際に


編んだ


店主にもわかる言葉でそう言うと

朝顔柄のハンカチにくるんだ何かを

手渡してくれました


宇宙語とこの星の言葉でお礼を言って

ハンカチを開くと

編みぐるみがでてきました

目が三つあるけれど

どこか懐かしくて愛らしい


お水の冷たい、また用意しとく。


宇宙語を話す猫は店主にわかる言葉でそう言うと

ウインクしました


三つ目の編みぐるみは

お腹に乾燥させたコーヒーかすを

抱いていて

ふんわりといい香りがするものだから

毛糸屋さんを訪れるお客にも大人気


編み方の用紙を刷っても刷っても

間に合わないほどです


今日も

トーザ・カロット岬毛糸屋さんでは

猫そっくりの店主が

まあるい手でひとつひとつ

大切に大切に

毛糸玉を並べています