猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

失せ物

いつもの隠し扉の前で

彼女は髪を振り乱してた


扉の鍵が見つからない

バッグにもポケットにも

銅鑼のチャームも見当たらない


扉さえ開けば


自分についた嘘

自分を飾る手管

手酷く振られた想い人


忘れたいこと何もかも

押し込んでしまえたのに


いつもの隠し扉の前で

彼女はぎりぎり唇噛んだ


扉の鍵が見つからない

バッグにもポケットにも

銅鑼のチャームも見当たらない


扉さえ開けば


あの日ついた嘘

傷つけた誰か

カサカサの感情


消したいこと何もかも

押し込んでしまえたのに


扉さえ開けば