猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

笑う猫のオムレツ

急にオムレツが食べたくなった。

空模様とにらめっこして、早めに買物を済ませる。

ぽつりぽつり、と何かを告白するような雨粒は、たちまち大号泣。街も車も隠してしまった。

 

バターの香りのするオムレツは、幼い頃から苦手だ。

どんなに大好きな具材でも、どんなに素敵な卵でも、お洒落な調味料であっても。

 

残すほどではなく、アレルギーもない。

 

それでも苦手なものは、親元を離れれば自然と食卓にのぼらなくなる。

自分のために作るオムレツは、本家本元のそれとは似ても似つかぬ装いとなるのだ。

 

円形の耐熱容器に野菜や肉類を適当にちりばめ、溶き卵を回しかける。

それを電子レンジで加熱する。

調味料によっては卵焼きの様相となるが、オープンオムレツと呼べなくもない。

表面が笑う猫の幸せ感を醸し出せば、出来上がり。

もちろん、フライパンでも。

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イラスト:伊藤乃吏子さん