お気に入りの青い傘を、猫店主の店で壊してしまう。無論、店主と取っ組み合いの大喧嘩の果てにということではない。
店が終わったあと、二人してコーヒーを淹れ、バックヤードで固いプリンを堪能した。
あまりの美味しさに詩人さんの使い慣れない魔法が発動し、物こそ飛ばなかったがバッグの中で「べきぼき」と不穏な音がした。
持ち歩いていた折り畳み傘に何が起こったか…は、ご想像におまかせする😭
猫そっくりの店主は少し毛を逆立てたが、雨が降らないうちに帰ったほうがいい、と優しく言った。
そんなことがあって、折り畳み傘を探していた。
できれば青くて、できれば日傘にもなって、できれば魔法にも…いや、高望みはするまい。
ふと思い立って、「毛糸屋のいない街」に出かけてみた。
相変わらずの浮かぶ海を遠目に眺めつつ、いつかの花屋で相談してみる。かすみ草を持ちやすいよう包み終わると、花屋でも傘を扱うことにしたから、と何本か見せてくれる。
では、空色に一番近いものを、と買い求めた。
不意打ちの魔法にも強いですよ、と花屋はにっこりする。お見通しか😅
帰りがけ、かすみ草が胸元で少し揺れたのは、魔法かどうかは詩人さんにはわからなかった。
詩人さんは空色の素敵な傘を買って、少しばかり幸せを味わっている。