猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜店主の好きな花〜

青空の色を

そっくりそのまま集めたような

まあるいまあるい花が

群生する森があります

 

トーザ・カロット岬で毛糸屋を営む

猫そっくりの店主は

その花が大好きでした

 

まあるいまあるい花は

空の色を映し海の色を宿し

だんだん夕暮れに彩られたように

紫に染まっていくのでした

 

よくよく晴れた日

毛糸屋の店主は店番を「空予報士」の夫婦にお願いして

森へ出かけました

 

さわさわさわさわ

風と光がかすかに話しかけてくるだけで

人も猫もだあれもいません

 

毛糸屋の店主は

小さなガラス瓶をサコッシュからとりだすと

まあるいまあるい花を

まあるいふかふかした手でそっと撫でました

しばらくそうしていると

小さなガラス瓶が少しだけ重みを増したので

人にも猫にも通じないけれども

あたたかな言霊を花たちに手渡し

森をあとにしたのでした

 

紫色に染まったガラス瓶

どんな毛糸玉になるのでしょう

 

トーザ・カロット岬には

今日も訪れる人を少しだけ優しくする風が

吹いているのです