猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜店主、旅に出る-10

ごとんごとん

ごとん、ご、と、ん

ご、とん

 

列車は岬に近い街の駅に

ゆっくりとまりました

 

猫そっくりの毛糸屋の店主は

最終列車を降りました

月も星も隠れてしまったので

あたりは真っ暗

人らが灯りもなしに散歩するには難儀な夜です

 

店主はここぞとばかりに

瞳をまあるく

お髭としっぽをピン!

そして荷物をおんぶしやすいようにまとめると

本当の猫のように

 

「にゃぁぁ」

 

一声鳴きました

そして

なんてことない猫の姿で

なんでもない風に荷物をおんぶして

闇の中を岬の自分の店まで

疾走するのでした

 

トーザ・カロットの岬には

今日もほんのひとしぼり分の

みかんの香りが紛れ込んだ

強い風が吹いているのです

 

 

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