猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

食い荒らされた心の穴

食い荒らされた心の穴を

モノで埋(うず)め始めた

初めは砂粒のようなピアス

きみは「化粧を変えたの?耳元がキレイ」と

笑ってくれて

穴はすぐに塞がった

 

次に小さいけれど

ほんとのダイヤのペンダント

ハイヒールを履いた日にすまし顔でつけてみた

きみは

目の前のステーキに夢中で顔も上げず

「美味しい」とモゴモゴ呟く

穴は半分も塞がらなかった

 

いつだったか

舌を噛みそな名前のワンピを纏って

きみの隣に寄り添った

「忙しいから」

妙にハキハキした口調でテキパキと

きみはどこかへ行ってしまう

穴はどんどん広がった

 

もう買うものは思いつかず

あたしは服に埋(うず)もれる

さびしいってほんとは

どんな感情なのか思い出せなくなるまで

穴を広げつづけてる