猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

風磨きのうさぎ-2

空にも地面にも心地のよい風が満ちています

今日は雨を降らせるお仕事はおやすみ

風磨きのうさぎは

トランプみたいな平たい雲に揺られ

うつらうつらしています

 

うっかり落っこちないように

ふかふかの前足を

しっかり雲に突っ込んで

ぽかぽか ゆらゆら

うつらうつらしています

 

この小さくて幸せそうな生き物が

たまに

岬の風を集めてきては

すっかり食べ尽くしてしまうので

人らはもう大騒ぎです

 

星が終わりそうだの

空の壊れ始めだの

もう岬には住めないだの

 

棚の後ろに隠れるものまで出るありさま

 

雲読みたちも岬の猫たちも森はずれの住民も

心得たものでうさぎについてはあまり語らず

それが功を奏したのか

岬の風やすみはよくわからないけれど

心配なことだと

一応はそういう話になっているのだとか

 

うさぎが風を磨くのは

雨ふらしのためでもあるし

ピカピカな晴れの日のためでもあるし

つまりは

うさぎにとっての普段ごと

特別なことなんてないのに

人らだけがこわごわ空を眺めているのです

 

知らないことや

見えないこと

わからないこと

それは全て怖くて良くないこと

 

そう決めてしまうのも

どうなのでしょうね

 

空にも地面にも心地のよい風が満ちています

トランプみたいな平たい雲の上から

 

けぷ

 

小さな小さな音が聞こえました

 

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