猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

海をしまった箱と、空をしまった箱をあずかっている。

 

 

この上なく、

どうしようもなく、

なんの手立てもなくなった時に、

初めてふたをあけなさい。

 

 

小学校にあがる少し手前、

夢の中で手渡されたのである。

ちいさかった私はただ、

変な夢としか思えず、

今の今まですっかり忘れてしまっていた。

 

子どもらが巣立ち、

連れ合いがいなくなり、

介護する相手もすでになく、

自身はそこそこ元気でいる。

 

ならば、と片付け物をしていて、

大切にしまい込まれた箱を見つけたのだった。

 

 

この上なく、

どうしようもなく、

なんの手立てもなくなった時に、

初めてふたをあけなさい。

 

 

海をしまった箱と、空をしまった箱は、

もう少し星が汚れてから開くべきなのか、

判断はつかなかった。

 

明日死ぬとしたら、

開けることにしよう。

 

誠実さとわがままの狭間で、

ぼんやり考えた。

 

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