海をしまった箱と、空をしまった箱をあずかっている。
この上なく、
どうしようもなく、
なんの手立てもなくなった時に、
初めてふたをあけなさい。
小学校にあがる少し手前、
夢の中で手渡されたのである。
ちいさかった私はただ、
変な夢としか思えず、
今の今まですっかり忘れてしまっていた。
子どもらが巣立ち、
連れ合いがいなくなり、
介護する相手もすでになく、
自身はそこそこ元気でいる。
ならば、と片付け物をしていて、
大切にしまい込まれた箱を見つけたのだった。
この上なく、
どうしようもなく、
なんの手立てもなくなった時に、
初めてふたをあけなさい。
海をしまった箱と、空をしまった箱は、
もう少し星が汚れてから開くべきなのか、
判断はつかなかった。
明日死ぬとしたら、
開けることにしよう。
誠実さとわがままの狭間で、
ぼんやり考えた。