猫街のちょうどいい場所に、猫街シネマがある。
詩人さんは映画好き。と言っても、内容によってはなんらかの(使いこなせない)魔法が発動して手持ちの何かをすっ飛ばす危険性があるから、アクション多めの作品は外では観ない。
ハンカチが飛ぶとかポップコーンを自分が頭からかぶるくらいなら、まあいいとして、座席を引っこ抜くくらいのことは起きそうな気がする。
それで、穏やかそうな物語を選んで、人の少ない昼間に出かけるのだ。
そうやって観た作品は、いつだって素敵だ。
悩みを忘れ、心配ごとを忘れ、訪れた時よりずっと元気になって日常へ戻っていく。シャワーやお風呂みたいだ。
栄養、かもしれません、と猫そっくりの店主がウインクするのが見えるようだ。
猫街のちょうどいい場所に、猫街シネマがある。
詩人さんは、そこで穏やかな物語が紡がれる時間を楽しみにしているのである。