猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

雨の星

ただいま、と

インターホン越しに声をかけつつ

帽子をとり

マスクと手袋を滅菌袋に押し込む

 

靴は殺菌箱へ

服にアルコールをふりかけ

体ごと感情を脱ぎ散らかせば

降り続きの雨が清めてくれるだろう

 

そして

僕は影も形もなくなって

ようやくあなたを抱きしめることが

許されるんだ

 

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くりかえしくりかえし

愛してるとささやいても

どこにも届かないと知っていながら

 

ただいま、と

ドア越しに声をかけつつ

自らをきちんと脱いで

タンスにしまう

 

そして

どこからも誰からも

見咎められない

雨の星で命をつないでいる