「おはようございます
今日の空は降ることを忘れているみたいですよ」
そんなことを言いながら
訪ねてくるのは一人しかいない
同族ではないが旅好きで
星を渡りたいと夢見て
とうとう雲を数える仕事についてしまった
おはようございます
相変わらず編み物をもつれさせてるの?
「なんとでも言ってください」
店主ってばおしゃべりなんだから、とこぼしつつ
それでも彼女は
「落ち空を預かってきました」
真面目な顔になった
すまないねえ
雲を数えられない人たちは
空をそのまま持ち運ぶなんて
まず無理な話だから
「訓練しても?」
人たちの持つ資質は
どこの星だってさまざまなのよ
あんただって毛糸はもつれさせるほうが得意だろうに
軽口をたたいてしまうが
彼女は
「雲を数えることも、宿命なんでしょうか」
ぽつりと言った