猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん〜開店前

今日は朝から土砂降りです

しっかりした雨よけの服に身を包み

おじいちゃんにもらった頑丈な傘をさして

毛糸屋さんを目指します


お店に着くと

少しひんやりした朝だからと

開店前に店主がとっておきの豆で

コーヒーを淹れてくれました


やっぱりカフェだか毛糸屋さんだか

わからな


“なにか言いましたか”


猫そっくりの店主がいつのまにか

湯気のたつマグカップをお盆にのせて

後ろに立っていました


それはその

世界一の毛糸屋さんだなぁと


“そういうことにしておきましょう”


熱いですよと手渡されたマグに

ほっと一息

店主はと見ればアイスミルクです

とてつもなく猫舌なので

アイスキューブにしているのだと

ひとかけマグに入れてくれました


決めた!

あたし、雲を数える仕事につきます

空が落ちて泣く人が

1人でも少なくなるように


“そろそろ見習い卒業ですね”


猫そっくりの店主は糸のような瞳になると

まあるい手で

いつかのようにそっと頭をなでてくれました


トーザ・カロットの岬には

今日も何かを思い出させるような風が

びゅうびゅうと吹いているのです