三丁目のあたりに落っこちた空を
よけていくうちに
ミルクを切らしていたのを
思い出したのです
本物の生きている牛は
もういないので
おしまいのミルクをコップ一杯だけ
買うことにしました
角を曲がって二軒目の
なんでもかちんかちんに凍らせて
売っている無人冷凍庫
ミルク代を底なしつぼに落とし
お店をあとにしたのです
ほこりっぽい坂道を真ん中まで登ったころ
無人冷凍庫のお店のほうから
「チリンチリン」とえも言われぬ
美しい音が聞こえました
その音にようやく少し息をつき
ここにいることと
かちんかちんに凍ったミルクと
どちらが本物なんだろう
そんなことを思いました