猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

おしまいのミルク-1

三丁目のあたりに落っこちた空を

よけていくうちに

ミルクを切らしていたのを

思い出したのです


本物の生きている牛は

もういないので

おしまいのミルクをコップ一杯だけ

買うことにしました


角を曲がって二軒目の

なんでもかちんかちんに凍らせて

売っている無人冷凍庫

ミルク代を底なしつぼに落とし

お店をあとにしたのです


ほこりっぽい坂道を真ん中まで登ったころ

無人冷凍庫のお店のほうから

「チリンチリン」とえも言われぬ

美しい音が聞こえました


その音にようやく少し息をつき

ここにいることと

かちんかちんに凍ったミルクと

どちらが本物なんだろう


そんなことを思いました