猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-16

コロコロ ちりちり

パリパリ さわさわ


なんとも心地よい音が

お店の奥から聴こえてきます

それはそれはひそやかに

とてもとてもささやかに


手にとると消えてしまったり

近づくと歌いはじめたり

毛糸玉たちは気まぐれです


猫そっくりの店主はまあるい手で

ひとつひとつ大事に大事に

毛糸玉を棚に並べます


どんなに気まぐれな毛糸玉たちも

猫そっくりの店主にかかれば

眠っている赤ん坊のよう

すっかりいい気持ちになって

誰かのマフラーや

誰かの帽子に生まれ変わるのを

夢見ているのです


トーザ・カロット岬には

今日もびゅうびゅうと力強い風が吹いていて

店主はしっぽを楽しげにゆらゆらさせました