猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

トーザ・カロット岬の毛糸屋さん-13

トーザ・カロットの岬に

びゅうびゅうと雪混じりの風が吹き荒れています


猫そっくりの店主は

ワンピースのようなエプロンをつけて

お店の奥でコーヒー豆を選んだり

毛糸玉を数えたり

キンキンに冷えたお水を用意したり

いつもより

ほんの少し早歩き

今日は年忘れのちいさなちいさな集まりの日


そろそろみんながやってくる時間です

猫そっくりの店主はまあるい手で

首元の短いマフラーを整えて

エプロンのポケットにそっとさわりました


ふわりと森の香りがして

夏のもくもくした大きな雲の形や

泣きそうな顔の女の子のことを

思いました


そして

エプロンを作ってくれた

だいすきな友だちのことを

思いました


コポコポコポ

店の奥からコーヒーの香りが

流れてきます


猫そっくりの店主は

もういちどテーブルを整えてから

しっぽをゆらゆら

耳をぴくぴく


気の早いお客様をお出迎えに

お店の奥へと姿を消しました


トーザ・カロットの岬には

今日も明日も

びゅうびゅうと夢を運んでくる風が

吹いているのです