昔むかーし
今でいう猫という生き物に
それはよく似た
二本足の生き物がおってな
島のはずれのなんとかいう岬で
毛糸屋さんを
しておったそうな
不思議な毛糸玉を
どこからか仕入れては
ころんころんした手で
そーっとそーっと
おとさんように気をつけて
箱に詰めたり
袋に入れたり
棚に並べたり
しておったそうな
毛糸玉の中には
鈴のような音色を奏でるものがあって
編み物をする人の心を
そーっとそーっと
なぐさめてくれたそうな
とりわけ風の強い午後には
学校帰りの娘さんが
髪を揺らしてお店にきておったそうな
そして
続きは
この猫が起きてからにしようかね
おじいちゃんは膝の上のミケを
そーっとそーっとなでながら
にっこりしました