猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

大移動する詩人さん

花を咲かせるのは、多分あまり向いてないらしい。

それはそうだ。冬のかけらに触れても(冷たさを感じはするが)平然としているくらいだ。

植物には寒すぎるのだろう。

「年中花を楽しめます」というポップに惹かれ迎え入れた小さな鉢は、一晩で全ての蕾が落ちたものである。

 

ただ、葉や蔓を楽しむタイプのものとは相性が合うようで、枯れかけたものもいつの間にか息を吹き返している。

いずれも陽の光が大好きときているので、午前中と午後で置き場所を変えなければならない。朝から鉢を抱え、部屋から部屋へ大移動というわけだ。

 

実を言えば、ほんの少しだけ受け継いだ魔法を持っている。

本気を出せば、街ひとつ氷漬け(!)できるほどのものらしく、普段でも風を吹かせて、ちょっとしたものなら浮かせられる。

コントロールは超がつくほど下手くそで、いつだったか呼び鈴に振り向いた際、浮かせていた鉢をドアにすっ飛ばしてしまった。

それ以来、よほどのことがなければ「魔法を大切に片づける」ことにしている。

まあ、会社で重いものを運ぶときぐらいは…おっと、話がそれた。

 

本格的な冬が来れば、「詩人さんが寒くした!」などと言われなくてすむから、この季節は嫌いではない。

かくして、この冬も部屋から部屋へと魔法を使わずに大移動する毎日なのである。