のみこむことは
苦手だ
嚥下にかすかな問題があるのだろう
幼い時分から今に至るまで
むせる回数は人より多めだった
親の昔語りによれば
心でのみこんだことを
言葉で吐き出せずに、ということも
あったようである
例えば
たまに飲む炭酸飲料が
口の中でころげまわり
ひと息ではのみこめない
そんな日がある
ひどく辛いわけでも
ひどく悲しいわけでも
ないのに
魚の骨のように
粘膜を縫い付ける単語が
心を刺すのである
のみこむことは
苦手だ
夢も現実も喜びも悲しみも
口の中で暴れ続けている