猫街暮らしの詩人さん

猫街に暮らす詩人さんのひとりごと

春の気配

冬の気配はドアから引っぺがしてもそこまで悪さをしないが、春の気配となると話は違ってくる。

宇宙全体がポカポカ傾向のようで、ここ猫街も御多分に洩れず。雪は深いが寒さはそれほどでもない。

 

午後の予定を早めに切り上げ帰宅した。鍵を開けようとして気がついた。

ドアノブに貼りついているのは…随分とまた黄色い気配だ。

猫街に暮らし始めた頃、なんとなく剥がしたところ、目の前が真っ黄色になった。びっくりしたはずみで風を集めてしまい、猫街中の人らがしばらくクシャミが止まらなくなった。

以来、ドアが黄色っぽく見える時は、用心している。

 

ポケットから紙袋を取り出した。

ドアノブに息を吹きかけ、素早く袋をかぶせる。それで終わりだった。あとは雪か雨の日を選んで、集積所に持っていけばいい。

紙袋は数日そのままにしておけば、それ以上の「春の黄色い気配」が現れることはない。

 

どんなシステムになっているのか不思議でならないのだが…それはかみさまの領域であろうから、深入りしないことにする。

 

黄色い気配が桜ピンクの気配に変わるまで、あと少し。

春は人を元気にしたり不安がらせたりするけれど、いくらかでも待ち遠しく感じる幸せを大切にしたいものだ。